京都市域運輸連合(案)

A Proposal for the Kyoto City Transit Alliance


京都市営地下鉄は烏丸・東西の2線だが,京阪本線・鴨東線や阪急京都線などを含めると,京都旧市内には既にかなりの都市高速鉄道ストックが存在する。都市公共交通へのモーダルシフトを進める上で軌道系の活用は重要だが,運営主体が複数の企業にまたがり各社ごとに初乗り運賃を取られる現状では,折角のストックが面的な「路線網」として機能していないことが問題である。

たとえば三条京阪から西院へ行く場合,四条から阪急河原町に乗継ぐと320円(4.1km),烏丸御池経由の場合380円(4.8km)。丹波橋から烏丸御池の場合,三条京阪経由で490円(9.4km),竹田から地下鉄経由で420円(8.5km),近鉄京都駅経由だと430円(8.7km)となって,同一社線内の同一距離帯運賃と比べて5割増以上の高額となる。

鉄道新線などハードの整備には多額の建設費と長い時間を要する。交通計画的には,まずソフト的な対策を尽くした上でハードへ進むべきであり,運賃制度の修正は(事業者間の合意が取れれば)比較的短期間で,大した費用を掛けずに実施できる。以下に関連する事業者の距離帯別運賃をまとめる。(2019年10月現在)

会社名初乗り運賃(km)次の運賃(km)その次の運賃(km)備考
京都市交通局220円(3.0)260円(7.0)290円(11.0)
京阪電鉄(京阪線)160円(3.0)210円(7.0)270円(11.0)鴨東線は60円加算
京阪電鉄(大津線)170円(5.0)240円(10.0)330円(15.0)
阪急電鉄160円(4.0)190円(9.0)230円(14.0)
近畿日本鉄道160円(3.0)210円(6.0)260円(10.0)以後4.0kmごとに40~60円

事業者相互間の乗継ぎ割引きは,以下の区間に設定されている。

(1) 地下鉄東西線と京阪大津線を御陵で乗継ぐ場合,東山~大谷間で90円,三条京阪~びわ湖浜大津間で70円,三条京阪~石坂線内で20円を減額する。
(2) 地下鉄烏丸線と近鉄の伏見以南を竹田で乗継ぐ場合,(地)九条~桃山御陵前間で20円,(地)京都~向島間で10円を減額する。
(3) 近鉄と京阪の初乗り運賃区間相互間を丹波橋で乗継ぐ場合,20円を減額する。

(1)の乗継ぎでは,三条京阪~びわ湖浜大津間の合算運賃500円が430円になり,割引は大幅であるように見えるが,旧京津線の同区間の運賃310円に対する救済措置に過ぎず,それ以外は短区間・少額の割引に限られる。

京都市域全体に関して一種の運輸連合制度を作って,特定区間内相互間の利用については,経路に関わらず京都市営地下鉄並みの統一運賃を適用すると,多くの区間で値下げが可能となり,利用者からも解り易くなる。事業者間の乗継ぎはラチ内で実施できることが望まれるが,最近はICカード乗車券が使用されるため,出場・入場の時刻管理に伴う技術的な問題は殆ど存在しない。

「特定区間」の一例として,京都市営地下鉄に加えて,京阪電鉄鴨東・京阪・宇治線(出町柳-中書島-六地蔵,15.0km),大津線(御陵-京阪山科,1.5km),阪急電鉄(京都河原町-桂,7.3km),近畿日本鉄道(京都-桃山御陵前,6.5km)を含む図のような線区を考えることができる。

小規模の方が合意を得易いため,上図にはJR線や京福・叡山電鉄は含まれていない。JR線を加える場合は,西大路~山科間,花園~JR藤森間などが考えられる。近鉄京都は(地)京都と,京阪山科は(地)山科と,列車系統の関係で誤乗が生じ易いにも拘らず,懲罰的な増し運賃を課すのは余り合理的ではないため,伏見桃山・桃山御陵前を含めて,実質的に同一箇所の駅を含む区間設定としている。地下鉄・京阪の六地蔵駅は約400m離れているが,東西線・六地蔵延伸に伴い,京阪宇治線の六地蔵駅までを特定区間に含めた。

この区間に対して,京都市営地下鉄の運賃を適用すると,上の三条京阪~西院間は260円,丹波橋~烏丸御池間は290円となる。この値下げの原資は,基本的には同一社線内利用者の運賃値上げ分で賄うことになるが,実際に総運賃収入に関して中立的であるか否かは,現状のパーソントリップ調査結果等を用いて予測する必要がある。区間数としては値上げ区間より値下げ区間の方が多いので,運賃弾力性の程度にもよるが,全体の乗客数は増加が見込まれる。
#たとえば出町柳~西大路四条間の市バス3系統利用者の減少など,路面交通からの転移とそれに伴うバス事業の採算悪化は別途考慮する必要が生じる。

ただし運賃収入を事業者間でどう配分するかのルール作りは別問題で,特に鴨東線の割増し運賃の解消が必要なので,この部分については何らかの財政措置が必要になる可能性がある。
#自動車諸税の一部を都市高速鉄道の資本費へ充当することは検討されて然るべきだろう。たとえば現在でも,都市モノレールのインフラ部分は「特殊街路」の位置づけで道路予算で作られている。

とりあえず「PiTaPa」利用者について,期間を限って社会実験をやってみることは有意義かも知れない。普通券を正規運賃で発売する場合,同一社線内利用者は「PiTaPa」から普通券にシフトするため,その分については減収が予想されるが,実験には「不確定性」が付き物なので,多少のことには目を瞑る必要があろう。

(9/14/2002;Rev.12/13/2019)

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