京都市域運輸連合(案)

A Proposal for the Kyoto City Transit Alliance


京都市営地下鉄は烏丸・東西の2線ですが,京阪本線・鴨東線や阪急京都線などを含めると,京都旧市内には既にかなりの都市高速鉄道ストックが存在します。都市公共交通へのモーダルシフトを進める上で軌道系の活用は重要ですが,運営主体が複数の企業にまたがり各社ごとに初乗り運賃を取られる現状では,折角のストックが面的な「路線網」として機能していないことが問題です。

たとえば三条京阪から西院へ行く場合,四条から阪急河原町に乗継ぐと300円(4.1km),烏丸御池経由の場合350円(4.8km)。丹波橋から烏丸御池の場合,三条京阪経由で460円(9.4km),竹田から地下鉄経由で380円(8.5km),近鉄京都駅経由だと400円(8.7km)となって,同一社線内の同一距離帯運賃と比べて5割増以上の高額となります。

鉄道新線などハードの整備には多額の建設費と長い時間を要します。交通計画的には,まずソフト的な対策を尽くした上でハードへ進むべきであり,運賃制度の修正は(事業者間の合意が取れれば)比較的短期間で,大した費用を掛けずに実施できます。以下に関連する事業者の運賃をまとめます。

会社名初乗り運賃(km)次の運賃(km)その次の運賃(km)備考
京都市交通局200円(3.0)230円(7.0)260円(11.0)以後4.0kmごとに30円
京阪電鉄(京阪線)150円(3.0)200円(7.0)260円(11.0)鴨東線は60円加算,大津線は区間制※
阪急電鉄150円(4.0)180円(9.0)220円(14.0)
近畿日本鉄道150円(3.0)200円(6.0)250円(10.0)以後4.0kmごとに40~50円

事業者相互間の乗継ぎ割引きは以下の区間に設定されています。(2002年3月現在)

(1) 地下鉄東西線と京阪大津線を御陵で乗継ぐ場合,東山~大谷間で90円,三条京阪~浜大津間で70円,三条京阪~石坂線内で20円を減額する。
(2) 地下鉄烏丸線と近鉄の伏見以南を竹田で乗継ぐ場合,(地)九条~桃山御陵前間で20円,(地)京都~向島間で10円を減額する。
(3) 近鉄と京阪の初乗り運賃区間相互間を丹波橋で乗継ぐ場合,20円を減額する。

(1)の乗継ぎでは,三条京阪~浜大津間の合算運賃460円が390円になり,割引は大幅であるように見えますが,旧京津線の同区間の運賃310円に対する救済措置に過ぎず,それ以外は短区間・少額の割引に限られています。

京都市域全体に関して一種の運輸連合制度を作って,特定区間内相互間の利用については,経路に関わらず京都市営地下鉄並みの統一運賃を適用すると,多くの区間で値下げが可能となり,利用者からもわかり易くなります。事業者間の乗継ぎはラッチ内で実施できることが望まれますが,最近は磁気券が使用されているため,出場・入場の時刻管理に伴う技術的な問題は殆ど存在しません。

「特定区間」の一例として,京都市営地下鉄に加えて,京阪電鉄京阪線・鴨東線(出町柳-伏見桃山,11.0km),大津線(御陵-京阪山科,1.5km),阪急電鉄(河原町-桂,7.3km),近畿日本鉄道(京都-桃山御陵前,6.5km)を含む図のような線区を考えることができます。

小規模の方が合意を得易いため,上図にはJR線や京福・叡山電鉄は含まれていません。JR線を加える場合は,西大路~山科間,花園~JR藤森間などが考えられます。また東西線・六地蔵延伸時には,京阪線の伏見桃山~中書島~六地蔵間の追加も検討の必要があります。近鉄京都は(地)京都と,京阪山科は(地)山科と,列車系統の関係で誤乗が生じ易いにも拘らず,懲罰的な増し運賃を課すのは余り合理的ではないため,伏見桃山・桃山御陵前を含めて,実質的に同一箇所の駅を含む区間設定になっています。

この区間に対して,京都市営地下鉄の運賃を適用すると,上の三条京阪~西院間は230円,丹波橋~烏丸御池間は260円となります。この値下げの原資は,基本的には同一社線内利用者の運賃値上げ分で賄うことになりますが,実際に総運賃収入に関して中立的であるか否かは,現状のパーソントリップ調査結果等を用いて予測する必要があります。区間数としては値上げ区間より値下げ区間の方が多いので,運賃弾力性の程度にもよりますが,全体の乗客数は増加が見込まれます。
#たとえば出町柳~西大路四条間の市バス3系統利用者の減少など,路面交通からの転移とそれに伴うバス事業の採算悪化は別途考慮する必要があります。

ただし運賃収入を事業者間でどう配分するかのルール作りは別問題で,特に鴨東線の割増し運賃の解消が必要なので,この部分については何らかの財政措置が必要になるかも知れません。
#自動車諸税の一部を都市高速鉄道の資本費へ充当することは検討されて然るべきでしょう。現在でも都市モノレールのインフラ部分は「特殊街路」の位置づけで道路予算で作られていることですし。

とりあえず「スルット関西」利用者について,期間を限って社会実験をやってみることは有意義かも知れません。普通券を正規運賃で発売する場合,同一社線内利用者は「スルット関西」から普通券にシフトするため,当然減収が予想されますが,実験には「不確定性」が付き物なので,多少のことには目をつぶらざるを得ないでしょう。

(2002.9.14)

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