特許公報 昭25-4013

(このページでは,京都市が特許を保有していた,軌道回路を利用した交差点の自動分岐装置の仕様について,特許公報の原文を掲載します。)

公告 昭25.11.20 出願 昭24.9.30 特願 昭24-9679

発 明 者鈴木亮三彦根市七十人町34
出 願 人京都市
代理人 弁理士島田賢三


自動転轍装置

発明の性質及目的の要領

本発明は一定期間をおいて間歇的に異なれる方向指示をなす電車進行方向指示装置と,電磁的自動転轍装置と,該転轍装置を作動せしむるリレー,開閉器等よりなる装置とよりなり,上記方向指示装置が所望方向を指示している期間中に車輌を軌道分岐点の絶縁区間内に進入せしむることに依り上記リレー開閉器等よりなる装置を作動せしめて上記転轍装置を作動せしめ之に依り分岐点の軌条を所望方向に開通せしむるようにしたことを特徴とする自動転轍装置に係り其の目的とする所は従来のように方向指示信号所人手等を要せずして軌条の転轍を単に方向指示装置の支持に従も車輌を分岐点絶縁区間に進入せしむることに依り軌条を所望方向に開通せしめんとするにある。

図面の略解

図面は本発明自動転轍装置の一実施例の回路図を示すものである。

発明の詳細なる説明

本発明は主として路面電車の転轍装置に関するもので軌道の分岐箇所に若干時間の間隔を置いて間歇的に点滅する方向指示灯を設置し該方向指示灯の方向指示に従い軌道の分岐点に特設した絶縁軌条区間に電車を進入せしむることに依りポイントを自動的に所望方向に開通せしめんとするものである。

次に図面を参照して本発明の一実施装置に付詳述すると,図面において1は電動機2,3及4は上記電動機1により減速歯車装置5を経て同一速度を以て回転するドラム型開閉器,2',3'及4'は右ドラム型開閉器2,3及4の導電部6及7は変圧器8,9,10及11はリレーで其の内9はダッシュポット付時限型である,12及13は無電圧に依り作動する鎖錠器,14は転轍用ダッシュポット付電磁石,15,16,17,18,19及20は一連のレバー型転轍機構,21,22,23及24は軌道絶縁子,25及26は軌条で27及28は該軌条の絶縁区間である,又29は回転ドラム型開閉器で,29'は其の導電部である。次にP及Qは方向指示装置でp1,p2及q1,q2は其の方向指示灯である。尚30は電源開閉器,31は交流電源である。次に本発明装置の作動を説明すると,先ず電源開閉器30を閉じると電動機1は回転して之によりドラム型開閉器2の導電部2'が接点32を閉合している期間中は変圧器6の2次捲線よりの電流がリレー8の接点33並接点32を経て方向指示装置Pの指示灯p1を点灯し,又ドラム型開閉器3の導電部3'が接点34を閉合している期間中は変圧器6の2次捲線よりの電流がリレー8の接点33並接点34を経て方向指示装置Qの指示灯q1を点灯する,而して右両ドラム型開閉器2及3の導電部2'及3'は其の一方2'が接点32に接触している間には其の他方3'が接点34に接触しないし又3'が接点34に接触している間は2'が接点32に接触しないから指示灯p1及q1は一定時間(例えば30秒)をおいて連続的に交互に点滅する。

次に今電車を矢Qの方向に進めるには方向指示灯q1が点灯しているとき電車を絶縁軌条区間28上に進めるのである,然るときは電車が軌道上の35と36の点を短絡し従て変圧器7の2次捲線よりの電流が35,36の点を経てリレー11を作動せしめ其の接点37を開くと共に接点38を閉合する而して右接点38の閉合に依っては接点38,リレー10の線輪及接点40(接点40はドラム型開閉器3と同期的に回転しているドラム型開閉器4に依り3の導電部3'が接点34と接触している期間中之と同相に於て導電部4'に依り短絡される)を経て流れる電流に依りリレー10の接点41を閉合し従て接点41転轍用電磁石14の線輪を経て流れる電流に依り其の鉄心42を下降せしめてレバー15を下降せしめレバー16,17,18,19,20を介して軌条43を矢Rの方向に引き付ける,一方此のとき接点37の開放により鎖錠器13の線輪を励磁してレバー15を下降位置に抑止する,従て軌道はQの方向に開通し電車は自動的に何等の支障なく矢Qの方向に進行するのである。

次に右の作動の際変圧器7の2次電流はリレー9の励磁に依っては其の接点44を開いて鎖錠器12の線輪を減磁せしめてリレー10の接点41を閉合位置に抑止し又一方リレー8の線輪の励磁に依っては接点33を開き接点45を閉合するから変圧器6の2次電流が接点45及46を経て指示灯q2が点灯する(レバー15が下降することに依り連結杆47がドラム型開閉器29を矢の方向に回転せしめて其の導電部29'が接点46を短絡している)従て接点34が導電部3'と離れて指示灯q1が消灯しても電車が35,36の点の短絡を解かない限り方向指示装置Qが消えることはない,斯くして電車が矢Qの方向に進行し軌条の絶縁区間27,28を通過し終るとリレー11,9,8は減磁して夫々接点37,44,33を閉合し接点38及接点45を開路するから接点44の閉合に依っては鎖錠器12を附勢してリレー10の接点41の鎖錠を解き又接点37の閉合に依っては鎖錠器13を附勢して鎖錠器13の鎖錠部39を解除し電磁石14の上昇を自由とし更に接点36の開放に依ってはリレー10を減磁して其の接点41を開き従て電磁石14も減磁してレバー型転轍機構15,16,17,18,19,20がスプリング49の作動により軌条43を旧位に復さしむると共に連結杆47も下降して48が導電部29'と接触する,又接点45の開放に依っては指示灯q2を消灯せしめ更に接点33の閉合に依っては接点32又は34の短絡の際指示灯p1又はq1の点灯を可能ならしむるようにする。

次に以上のようにして本装置が図面のような位置に復して指示灯p1及q1が交互点滅しているとき今電車を矢Pの方向に進行せしむるには指示灯p1が点灯しているとき電車を進行させて之に依り35及36の点を短絡せしむるのである,然るときはドラム型開閉器2の接点32は導電部2'に依り短絡しているが此の短絡期間中はドラム型開閉器4の導電部4'は接点40と接触することがないから電車により右のように35,36の点が短絡されリレー11に依り接点38が閉合されても之に依りリレー10が作動することなく従て電磁石14を附勢して其の鉄心42を下降せしむることがない,従てスプリング49の力に依りレバー転轍機構15,16,17,18,19,20を図示の位置に抑止し軌条43が矢Rと反対方向に移動することがない故に軌条は矢Pの方向に開通し電車は矢Pの方向に支障なく進行するのである,而して此の際電車が35,36の点を短絡している限りリレー9及8は作動しリレー9の作動に依っては鎖錠器12を減勢して接点41が閉合することなきよう鎖錠し又リレー8の作動に依っては接点33を開いて指示灯p1を消灯せしめるが其のとき接点45が短絡されるから指示灯p2が接点45接点29'を経て点灯され方向指示装置Pは消えることがない。

以上の説明で明なように本発明は間歇的に点滅する方向指示装置の表示に従い其の指示が所望方向を指示している期間中に単に電車を進行せしめることに依り転轍装置は自動的に所望方向に軌道を開通せしめるから従来の如く方向指示を為す信号所を特設する必要もなく従て之に要する費用と人力とを節約し得,而も転轍装置が誤作動をなす惧れも殆んど完全に防止されるのである,尚本発明は一般の道路交通信号灯の設置されている場所に於ては先ず本発明の方向指示装置の点灯方向に従って発車し絶縁軌条区間に進入し其の際一般交通信号灯が青になってから進発すればよいから右のように一般信号灯が設置されている場所にも本発明装置は之に何等の変更を加うることなく利用し得るのである,又本発明装置は絶縁軌条区間に電車がある間は其の方向指示装置の点灯は点滅または消灯することがないから運転手に進行方向の錯覚を起さしめる惧れは全然ない又本発明は転轍装置作動電源の停電の際は開閉器30を開き鎖錠器13を手を以て外し転轍用電磁装置13を手力により下方に押し下げることにより転轍を行い然る後鎖錠器13を離せば容易にポイントを反位に鎖錠することができる。

特許請求の範囲

本文に詳記するように一定期間をおいて間歇的に異なれる方向指示をなす電車進行方向指示装置と電磁的自動転轍装置と,該転轍装置を作動せしむるリレー,開閉器等よりなる装置とよりなり上記方向指示装置が所望方向を指示している期間中に車両を軌道分岐点の絶縁区間内に進入せしむることに依り上記リレー開閉器等よりなる装置を作動せしめて上記転轍装置を作動せしめ之に依り分岐点の軌条を所望方向に開通せしむるようにしたことを特徴とする自動転轍装置。
(以上)

  • 特許の文章は読点の欠如により非常に読みにくい点をご了承下さい。また旧漢字と旧仮名遣いを現行字体と現代仮名遣いに直しました。

  • 若干時間の間隔を置いて間歇的に点滅する方向指示灯:本ホームページでは「進路選択信号機」と呼ぶ円形の中継信号機型灯器です。ただし初期には誘導信号機のような2灯の小型信号機が垂直に2基並んで設置されていました。東山七条や千本北大路では,昭和40年代初頭までこのタイプが見られました。

  • 他の関連特許及び実用新案はこちらで検索できます。「条件」に"B61L11/00"を入れて検索して下さい。