Old Pueblo Trolley

Tucson, Arizona, USA

(Photos: Mar. 1, 2003)

京都市電の動態保存は,営業運転中の伊予鉄道の2000型,広島電鉄の1900型を除くと,国内では明治村と梅小路公園があるが,これらは京電由来の狭軌車両なので,純然たる京都市電の動態保存はアリゾナ州ツーソンのみということになる。

ここでは旧京都市電の869号車が動態保存され,毎週末(金曜の夕方~日曜の夕方)に約2kmの区間で運転されている。

同車は京都市初の間接自動制御車である800型(Type 2)の869号として1953年4月に愛知富士で製造され烏丸に配置。1968年に壬生工場でワンマン改造に伴い直接制御化,1869号に改番され壬生に配置。1972年1月の壬生車庫の廃止に伴い一時期錦林に居たこともあるが,最後は烏丸に戻り1978年9月の全廃まで働いた。 その後,他の5両と共に南海電鉄大阪軌道線(現在の阪堺電軌)に移り,250型255号として1979年10月から1992年6月の廃車まで働いた。阪堺電軌には,僚友の256号(旧京都市1870号)が京都市時代の塗装に戻されて大和川検車区に保存されているが,車籍がないため本線上に出ることはできない。

255号はアリゾナ州ツーソンのNPO, Old Pueblo Trolleyに売却され,そのままの形態で1993年4月から就役したが,左側通行仕様の非対称2ドアは右側通行での運用に適さないためか,1994年5月に運用から外されワンマン改造以前の前後ドア仕様に復原された。1995年6月からの運行再開に際し,車両番号も255号からオリジナルの869号に改められた。同時にヘッドライトが腰板に移されたのが,見慣れぬ印象を与える。

京都市が保存している890号はType 3であり,外観は900型に近く800型の面影を伝えるものとは言えないため,同車は旧800型ツーマン車の外観を持つ,唯一の保存車になっている。

Euclid Ave.を渡ってUniversity Blvd.を東進する869号。終点まであと1ブロック。アリゾナ大学側の終点は正門近くの商店街にある。869号の後は,逆行で先着した4608号。単線なので出発順位はLIFOになる。
Arizona州Tucsonの大学大通,ヤシ並木を悠然と進む869号。"Greek System"と総称されるFraternity/Sororityはアメリカの大学町風景。全線単線だが,University Blvd.と4th Ave.の交差点付近のみ複線になっていて交換可能である。トロントから来たPCC車4608号。
869号と4608号の取り合わせ。4th Ave.と8th Str.の交差点には三角線があり,南西の車庫に続く。車庫内のブラッセル1511号。この日はLos Angeles 860号と思しき車両をバス庫に引き込んでリストアするため,仮線設置に多くの会員が出ている。
869号車内。中ドアを埋めた跡は座席化されているが,座席終端の手すりは元のまま残っている。この工事に伴うドアや窓枠の部品取り用に実はもう1両購入したが,そちらは既にスクラップ。
終点から東へ1ブロック,アリゾナ大学正門まで軌道は続く。現在PCC車は方転できないので,ループ線を建設する予定とか。869号車運転台。255のプレートや,方向幕の内容表示などは阪堺時代のまま。後方のシロアリに食われた木造車の残骸が860号。
(Mar. 6, 2003)

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