接近表示及び信号保安装置

Approach Indication and Interlocking Systems

このページでは,京都市電に特徴的だった運行管理システムについて,その核となる「接近表示装置」の設置時の記録を紹介します。

「電車の運行状況を操車室にて監視する装置があれば,特に路面電車においては操車の円滑化,運転能率の向上を図ることができる。 この第1段階として,操車場に帰着する電車を,ほぼ1km程度手前で,その系統別に操車室に報知する装置を試作し,昭和27(1952)年6月市電40周年記念展覧会に出品した。 その後同年11月より,二条駅前から壬生車庫に至る南行に設備して実質的なテストを行い,また七条烏丸・京都駅前間にも東山線,烏丸線,大宮線及び西大路線よりの着車を表示する装置を設けた。 昭和29(1954)年3月の白川線開通に当たっては,操車場より先の系統,或いは入庫・折返し等をも予告し,乗務員及び乗客に便宜を与えることのできる一層完全なものとし, 30(1955)年度には残り2運輸事務所(烏丸・九条)の操車場にも設置して,一応当初の目的を達成した。 またこれと並行して,4操車場前及び昭和27(1952)年9月に模様替えを行った京都駅前の計5ヶ所の操車用信号保安設備を新設もしくは電気化し, 従来信号人の転轍及び旗振り合図によっていた入替作業の能率を飛躍的に向上かつ安全確実ならしめた。」(昭和30年度「交通事業成績調書」)

各操車場手前の接近表示区間は,下表に示すように幾つかに分割され,各区間の在線車が系統表示できる形になっていた。 "C"は各区間の入口に相当し,誘導信号(系統通知信号機)に従って進入し,軌道回路で計数してリレーに伝える。 "A"は接近表示区間の合流部に設置され,トロリーコンタクターで方向別の進入を計数するが,京都駅前を除いて進入した車両の系統が引き継がれる。 "B"は第2区間の入口に設置され,トロリーコンタクターで計数すると同時に前区間の在線を消去する。"K"を付した区間には系統予告器(系統予告信号機)が併設されている。

操車場区 間動作着 工使用開始表示内容系 統備 考
京都駅前七条烏丸→烏丸塩小路A52.11.8記載なし3系統8両東山・烏丸・大宮+西大路京都駅前の3線化竣工は52.9.20
烏丸塩小路→京都駅前B3系統4両
壬生操車二条駅前→壬生車庫前C52.11.2453.5.14系統10両→5系統7両1・11・3・白※55.9.30
四条西洞院→四条大宮C53.22系統5両→3系統6両1・37・17系統は計数されない
※55.8.6
大宮松原→四条大宮南詰C53.24系統5両11・5・7・白7系統は計数されない
※55.9.3
四条大宮南詰→四条大宮B53.23系統3両11・5・白
四条大宮→壬生車庫前A53.24系統5両→5系統5両1・11・5・3
錦林操車岡崎通→天王町C54.2.554.3.14系統3両→4系統4両2・12・22・白※55.9.23
天王町→錦林車庫前BK4系統3両→5系統4両2・12・白・●●は予備
北白川→銀閣寺道C3系統3両→4系統4両2・12・白※55.9.23
銀閣寺道→錦林車庫前BK5系統3両→5系統4両2・12・22・白・●●は予備
烏丸操車烏丸鞍馬口→烏丸車庫前C55.3.1855.7.14系統10両4・5・6・白※55.9.23
西京大学前→烏丸車庫前C4系統4両6・16・14・白
大徳寺→烏丸車庫前C55.8.1355.9.234系統5両4・5・14・白
九条操車九条河原町→大石橋C56.1.2656.4.13系統4両7・8・白
大石橋→九条車庫前BK(A)5系統4両7・8・17・入・白伏見線より入った車は白表示
東寺前→九条大宮C2系統3両7・白5系統は計数されない
京阪国道口→九条大宮C3系統3両8・17・白
九条大宮→九条奈良電前A4系統3両7・8・17・白
九条奈良電前→九条車庫前BK3系統3両7・8・白

補足: (1) 備考欄の※印は,当初トロリーコンタクターが設置された区間と,ビューゲル化に伴って軌道回路へ変更された日付を示す。
(2) 「白」は当該操車場の正規所属系統以外の車(他車庫所属車・故障車・回送車等)であることを示す。
(3) 壬生車庫の北側の進入点は出世稲荷前(千本旧二条)にあったが,当初は二条駅前であったことが判る。
(4) 京都駅前には系統通知信号機の設置がないため,東山方からの進入を除いて,操車対象ではない壬生所属車の区別は付かない。
(5) 大石橋については,九条線からの車両には"B"として機能するが,伏見線からの入庫車については"A"で車両検知のみ行う。
(6) 壬生・錦林における表示内容の変更は,計画10号線整備に伴う20系統新設と22系統延伸に対応して58年度に実施。

七条烏丸:南行架線に設置されたトロリーコンタクターが,烏丸線からの車両進入を京都駅前操車室に通知する。(clickで拡大) 九条大宮:東寺前方からと京阪国道口方からの進入を区別し,合流後の接近順序を計数するために,架線上に2個のコンタクターが設置されている。

以下に,1958年度の信号保安装置・分岐器一覧を示す。ここには接近表示区間の入口や系統予告信号機の位置も示されている。計画6号線や10号線は開通済で,梅津線はトロバス化されており,中央卸売市場・高野操車場への引込み線も既に無い。北野線は営業中であり,市電最盛期の路線状況を示している。壬生・烏丸・九条・錦林・梅津の5車庫付近と京都駅西のりばには「信号保安装置」(継電連動装置)が設置されているが,この時点には京都駅東のりば(烏丸塩小路)は未接続であるため,信号保安装置も設置されていない。烏丸今出川・四条大宮のポイントは自動化されたが,七条烏丸のポイントは信号塔から手動操作されている。百万遍についても南~東の渡りのみ非自動とされているが,この渡りを通る常設系統は存在しない。また交通信号機の位置が記載されているが,主要交差点以外には殆ど設置されていなかったこと,伏見線の踏切も併用軌道上の3ヶ所を除くと,師団街道と津知橋通・舞台町以外は第4種であったことが読み取れる。(Mouse-on)で表示される55年度の図と比較されたい。

(8/17/2018; Rev.11/9/21)